こんにちは、モニ研(@medifav)です。現在、PCモニターの主流を占めている方式は「液晶」ですが、次世代パネル「有機EL」が急速に普及してきています。
テレビやスマートフォンなどで普及が進んでいる有機ELですが、最近ではハイエンドのノートPCやゲーミングモニターに採用されるなど着実にシェアを伸ばしています。
そこで本記事では、この「有機EL」について徹底解説します。意外と知られていない原理から、メリット・デメリットまで取り上げているので、この機会に知識を深めてください。
有機EL(OLED)とは?
「有機EL」とは、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence)の略で、電圧をかけると有機物が発光する現象のことを指します。この現象を利用した半導体は、有機発光ダイオード(Organic light emitting diode:OLED)と呼ばれており、次世代のディスプレイ方式として注目を集めています。
日本では、原理の名前を用いて「有機ELテレビ」や「有機ELディスプレイ」と呼ばれていますが、世界的には半導体の名前を用いて「OLEDテレビ」や「OLEDディスプレイ」と呼ばれています。
厳密に言えば、両者の語は意味が異なりますが、指している製品は基本的に同じです。
有機ELとは発光を伴う物理現象であり、その現象を利用した有機発光ダイオード(ゆうきはっこうダイオード、英: organic light-emitting diode: OLED)や発光ポリマー(はっこうポリマー、英: light emitting polymer: LEP)とも呼ばれる製品一般も指す。
Wikipediaより
有機ELは1950年代に発見され、90年代に入って実用化が進みました。当初は日本企業も開発を牽引していましたが、量産化の難しさを理由に断念。
その後サムスンが自社のスマートフォンに有機ELを採用し、急速に市場を形成しました。現在の有機EL市場は、サムスンとLGがほとんどのシェアを握っています。
有機ELの原理:液晶との違いは?
有機ELのモニターを検討する上で、おそらく最も気になる点は従来の液晶方式との違いでしょう。
最も明確な相違点は、液晶がバックライトを必要とする一方で、有機ELは半導体それ自体で発光することです。原理の違いに関して、以下で簡単に見ていきましょう。
液晶方式の場合、電圧をかけることで変化するのは液晶分子です。この液晶分子が向きを変えることによって、バックライトの透過率をコントロールします。
3原色のカラーフィルターを通る光量を調節することで、鮮やかな映像を作り出せます。
一方の有機EL方式では、バックライトは必要ありません。電圧をかけることで、有機物それ自体が発光します。
色に関しては、3原色それぞれのOLEDを用いる方式と、白色のOLEDをカラーフィルターで調光する方式とに分けられます。
どちらの方式も、液晶と比べて極めて薄く作ることができます。
液晶方式 | 有機EL方式 | |
電圧をかけると… | 液晶分子が変化 ↓ バックライトの透過率が変化 | 有機物自体が発光 |
有機ELのメリット・デメリット
ここまで有機ELの原理を見てきました。原理を知ることで、自然とその特徴も見えてきます。
上述の通り、有機ELはバックライトが不要であるため、液晶では考えられなかったほどの薄型化が可能です。
この特性を活かし、各メーカーから超薄型テレビや折り畳み式スマートフォンなどが発売されています。
また、有機ELは「黒」の再現性が高いとされます。
液晶はバックライトを遮蔽することで「黒」を作り出しますが、有機ELはそもそも発光しないことで「黒」を作り出すため、真っ黒に近い映像を再現できるからです。
画面に表示できる黒と白の輝度差を、コントラスト比と呼びます。このコントラスト比が高い有機ELは、液晶以上に色鮮やかな映像表現を追求できる方式です。
その他の観点も含めて比較すると、以下の表にまとめられます。ただし、あくまでも両者の傾向であり、個々の製品によってスペックは異なります。
有機EL | 液晶 | |
価格 | 比較的高い | 比較的安い |
コントラスト比 | 比較的高い/黒の再現性に優れている | 比較的低い/黒の再現性には限界がある (駆動方式により異なる) |
明るい場所 | 明るい場所では見えづらい | 輝度が高く屋外でも見やすい |
視野角 | 約180度 | 約140~180度 (駆動方式により異なる) |
消費電力 (モニターの場合) | 多い | 少ない |
サイズ・重量 | 薄型・軽量 | ある程度の厚さが必要 |
寿命 | 約3万時間(焼き付きが起きやすい) | 約6万時間(焼き付きはほとんどない) |
上記の通り、液晶の方が優れている点もあります。
たとえば、有機ELはバックライトを持たないため、直射日光の下で画面が見えづらい傾向にあります。
屋内で使う場合はさほど気になりませんが、屋外で使うノートPCの場合はネックになる可能性があります。
消費電力に関しては、原理としては自発光する有機ELの方が低電力とされています。
ただし、現行の大型有機ELディスプレイにはカラーフィルターが用いられているため、結果的に液晶よりも消費電力が多くなってしまいます。
また、一般的に有機ELは液晶よりも寿命が短いとされています。
使用環境によっては、以下に紹介する「焼き付き」を起こす可能性もあるため、取扱いには少し注意が必要です。
有機ELの注意点:焼き付きとは?
有機ELの製品を使う際に、一点だけ気をつけたいポイントがあります。
一般に「焼き付き」と呼ばれるもので、画面に残像が表示されたり、黄色く変色したりする現象です。
焼き付きはOLEDが長時間発光を続け、素子そのものが劣化することにより発生します。
厳密に言えば、この焼き付きは液晶モニターでも発生します。しかし、液晶の場合は原理的に焼き付きが発生しにくく、発生したとしても自然に直ることがほとんどです。
その一方で、有機ELの焼き付きは普段使いでも発生し、一度でも起きると基本的に直りません。高画質を長所とする有機ELにとっては、致命的な症状といえるでしょう。
焼き付きは画面の発光を続けることで発生するため、根本的には避けられません。とはいえ、以下のような対策を行うことで防止できます。
焼き付きを防止するために
焼き付きは同じ画面を表示し続けることで発生します。
ゲーム画面を開いたまま眠ってしまい、一晩で焼き付きが発生する可能性もあります。
自動スリープ機能などを活用し、使わないときはこまめに画面を消すようにしましょう。
画面の輝度が高いと、それだけOLEDの劣化も進みます。
こちらも必要に応じて明るさの自動調節機能を活用し、適度な明るさに抑えるようにしましょう。
OLEDの発光が強い「白」は、特に焼き付きが起きやすい色です。
白を基調としたメニューや背景は、それだけ負担がかかることを覚えておきましょう。
近年のOSやアプリに搭載されているダークモードで、黒を基調とした画面にすることも有効な方策です。
有機ELに向いている人は?
次世代の方式として期待されている有機ELですが、上述したように、必ずしもメリットばかりではありません。
テレビやスマートフォンに比べて、有機ELを採用したノートPCやモニターの数は限られています。まだまだ玄人向けといえるでしょう。
基本的に、有機ELは高画質を追求したい方におすすめです。現行で採用されている製品の多くは、優れた映像表現を売りにしています。
映像や画像を扱うクリエイターや、グラフィックにこだわるゲーマーの方は検討の余地があります。
また、ほんの数種類ですが「ALIENWARE AW5520QF」など、eスポーツ向けの有機ELゲーミングモニターも発表されています。ちなみに価格は40万円を超えているため、まだまだ普及には時間がかかりそうです…。
価格の他にも焼き付きの問題は依然として残りますが、今後も新製品が期待される領域といえるでしょう。
有機ELについての解説まとめ
有機ELはこの30年で急速に開発が進んだ分野です。今後もさらなる改良が加えられ、液晶と両輪を回していくことが予想されます。
PC製品への採用も進み、購入する際の選択肢も増えていくでしょう。
また、一方の液晶モニターも着実に改良が加えられてきました。色の再現性や視野角など、従来の欠点を補うための技術が次々に導入され、有機ELと遜色のない画質が達成されています。
悩ましいモニター選びですが、目的と予算を見定めた上で、十分に比較検討してください。
有機ELディスプレイの将来に期待!
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