【図解】モニターの「入力遅延(表示遅延)」とは?|テレビとの違い・応答速度との関係について解説

こんにちは、これまでに50台以上のゲーミングモニターを買い漁ったモニ研(@medifav)です。

今回はゲーミングモニターのスペック表には記載がないものの、リフレッシュレートや応答速度と並んでとても重要な要素である「モニターの入力遅延(表示遅延)」について解説していきます。

いわゆる「ラグ」のことですね。

※入力遅延と表示遅延は同じ意味ですが、メーカーによって表記がバラけています。モニ研では英語表記の「Input lag」を直訳した「入力遅延」を採用しています。

目次

モニターの入力遅延(表示遅延)とは?

入力遅延とは、ゲームをプレイしている際に自分の操作がモニターに表示されるまでの時間のことです。

入力遅延が大きいと「避けたはずの攻撃が当たってしまう」など、ゲームプレイで大きく不利になってしまいます。

入力遅延が短い
  • 自分の操作と表示される映像にラグがない
入力遅延が長い
  • 自分の操作と表示される映像にラグがある

まずはゲームをプレイするときに、どのような流れで映像が処理されるのか確認しておきましょう。

モニターに映像が表示されるまで

  1. STEP

    マウスやゲームパッドで操作を入力

    「銃を構えて撃つ」「パンチをガード」などの入力操作です

  2. STEP

    入力された情報をPC(GPU)が処理してグラフィックスを生成

    主にグラフィックボードがその処理を担います

  3. STEP

    PCからモニター内部の映像エンジンにグラフィックスが渡されて処理される

    処理した映像をモニターが受け取って、映像エンジンによる画像処理が行なわれます

  4. STEP

    映像エンジンで処理された映像がパネルに表示される

    パネルの色変化(≒応答速度)によって映像を写します

このように、実際に入力した操作が画面に表示されるまでには複数の処理が行われることがわかりますね。

上の図でSTEP1〜STEP3の処理に必要な時間を「入力遅延(表示遅延)」といいます。

またSTEP4でパネルの色が変わる速さを「応答速度」といい、こちらもゲーミングモニターでは重要な要素となってきます。

入力遅延と応答速度の違い

  • 映像処理で発生するのが「入力遅延」
  • パネルの色変化で発生するのが「応答速度」

※応答速度についてはこちらの記事でも解説しています

実際に入力遅延が起きるとどうなるのか?

入力遅延が起きると、実際に目にしている映像とPC(ゲーム機器)の処理のタイミングがズレて、以下のような事態が起きてしまいます。

  • 格闘ゲーム:避けたはずの相手のパンチが当たってしまう
  • シューティングゲーム(FPS・TPS):避けたはずの相手の銃弾が当たってしまう
  • リズムアクションゲーム:タイミング良く叩いたはずの鍵盤が押せていない

このように、入力遅延が起きている場合、モニターの映像は「過去の映像」となるため、「いま現在」PCで動作しているプログラムが別の処理になってしまうのです。

入力遅延があるとゲームですごく不利!

入力遅延の目安は?

それでは、この入力遅延がどの程度の数値だとラグを感じるのでしょうか?一般的には1フレームが16ms程度のため、以下の数値を参考にしています。

  • 1ms〜16ms:FPS/TPSや格闘ゲームなど動きの激しいゲームでもラグを感じない
  • 16ms〜32ms:一般的なゲーマーならほとんどラグを感じない
  • 32ms以上:一般的なゲーマーでもラグを感じるレベル

ヒトの目はかなり精密にできているため、コンマ数秒でも遅延があると段々と疲労やストレスが溜まっていきます。

特に動きの激しいゲームをプレイする場合はその症状が顕著に現れるため、FPS/TPSや格闘ゲームをメインで遊ぶ場合は、入力遅延が1ms〜16msのゲーミングモニターを選ぶのがおすすめです。

ちなみにリフレッシュレートが60Hz(1秒間に60回画面が更新される)のモニターを使用した場合、1フレームの更新に必要な時間は1÷60≒16.67ms(0.01667秒)です。つまり、入力遅延が16ms以上あると画面に表示された映像はワンフレーム前のものとなります。

リフレッシュレート画面の更新速度入力遅延の目安
60Hz16.67ms16ms以下
144Hz6.94ms6ms以下
240Hz4.17ms4ms以下

格ゲーでワンフレームの遅れは命取り…!

入力遅延の数値を調べる方法

ここまで入力遅延の概要を解説してきましたが、実際にモニターの入力遅延を調べるにはどうしたらいいのでしょうか?

入力遅延はモニターのスペック表やカタログに数値が記載されていることはほぼありません。

そのためモニ研のようなモニターオタクは、以下のような方法で入力遅延を計測しています。

  1. 「押すと光るキーボード」を使って、960fpsのスーパースローモーションでキーボードを押してからモニターに文字が表示されるまでを撮影し、フレーム数から逆算する
  2. 「オシロスコープ」という装置を使って、モニターの電気的な振動の変化を計測する(なお卒業した大学への協力依頼が必要)
  3. SMTT 2.0」という計測ソフトを使って測定したデータを海外の専門サイト(TFT Central)で確認する

最近はほとんど③の方法で数値を確認しています

テレビは入力遅延と応答速度がとても遅い

最近モニ研のTwitterにこのような質問が届きました。

研究員A

研究員A

テレビでもリフレッシュレート60Hz出るのに、わざわざゲーミングモニター買う必要あるの?

テレビは入力遅延と応答速度がとても遅いんだよ!

最近ではテレビの性能も向上して、テレビでもリフレッシュレート60Hzへの対応は当たり前になりました。

しかし、テレビは綺麗な映像を楽しむための装置なので、テレビ内部の映像エンジンがPCから渡されたグラフィックを綺麗な映像に加工しています。

この「映像を美しく加工するのにかかる時間」がゲーミングモニターと比較すると圧倒的に遅く、そのまま入力遅延の遅さに直結しています。

テレビ
  • 入力遅延は30〜100ms
  • 映像加工が遅い(映像は美しい)
  • パネル表示が遅い
モニター
  • 入力遅延は0.1〜10ms
  • 映像加工が速い(映像はほどほど)
  • パネル表示が速い

当然ながら、画面が大きいほど表示遅延も長くなります。実は「60インチの大画面テレビ」でゲームをやるなんて最悪な環境なんです…。

入力遅延が短いおすすめのゲーミングモニター

ここからはTFTCentralの入力遅延計測データを参考に、「入力遅延が短いおすすめのゲーミングモニター」をモニター専門家が紹介していきます。

TFTCentralより引用

Acer XV273Xbmiiprzx

  • 入力遅延:0ms(実測値)
  • 応答速度:0.1ms(GTG:公称値) / 2ms(実測値)
  • リフレッシュレート:240Hz
  • 解像度:フルHD
  • 価格:54,252円〜

実測値で最も入力遅延+応答速度による遅延が短かったのが「Acer XV273Xbmiiprzx」です。なんと入力遅延は驚異の「0ms」です。入力遅延はないんです。

HDR400やG-SYNCに対応した、いわゆる全部入りの高級ゲーミングモニターですが、その性能は実測値でも段違いでした。

ASUS TUF Gaming VG279QM

  • 入力遅延:0.3ms(実測)
  • 応答速度:1ms(GTG:公称値) / 2ms(実測値)
  • リフレッシュレート:280Hz
  • 解像度:フルHD
  • 価格:51,678円〜

「ASUS TUF Gaming VG279QM」は280Hzに対応していることがモニター界隈で話題となった最新モデルです。

リフレッシュレート280Hz対応というだけで「買い」なゲーミングモニターなのに、ラグの少なさも驚異的。RTX30シリーズとの相性も抜群ですね。

LG 27GL850-B

  • 入力遅延:0.3ms(実測)
  • 応答速度:1ms(GTG:公称値) / 2.4ms(実測値)
  • リフレッシュレート:144Hz
  • 解像度:WQHD
  • 価格:52,217円〜

「LG 27GL850-B」はフルHD(1920×1080)の上をいくWQHD(2560×1440)という高解像度ながら、リフレッシュレート144Hzに対応している唯一無二のゲーミングモニターです。

映像面の美しさが話題に登りがちな製品ですが、入力遅延や応答速度によるラグの短さは圧巻です。映像重視のRPGだけでなく、FPSやTPSを高解像度で遊びたい方はぜひチェックしてほしい製品になってます。

「入力遅延」は遅延全体のほんの一部

以上、ゲーミングモニターの「入力遅延」についての解説でした。

▼ポイントをまとめると、このような内容です。

  1. 入力遅延はラグの原因
  2. 入力遅延が長いと映像が遅れて見える
  3. 入力遅延はテレビやモニターの映像加工エンジンの処理によるもの
  4. テレビはモニターに比べて入力遅延が数十倍長い

最後に「入力遅延」は遅延全体のほんの一部であることを解説しておきます。

この画像は世界一のグラフィックボードメーカー「エヌビディア社」のプレゼン資料に使われたスライドです。

このスライドでは、ゲームを遊ぶ際に遅延が起きる要因を列挙しています。

肉体的な要因による遅延・マウスを押す際の肉体的な反射神経による遅延
PC処理による遅延・PCがデータを取り込むサンプリング時の遅延
・ゲームソフトのゲームエンジンの処理による遅延
・ゲームソフトのデータ言語から画像・映像などを生成する処理の順番待ちによる遅延
・GPUが3Dグラフィックスの画像描写処理を行う際の遅延
・PCから映像信号を発出する際の遅延
モニターによる遅延・入力遅延による遅延(←この記事で解説
・応答速度による遅延

このようにさまざまな要因が遅延を生み出していることがわかりますね。この記事を参考にしてゲーミングモニターをしっかり選ぶことで、「入力遅延」と「応答速度」による遅延とはおさらばしましょう。

遅延の闇は深いんです…。

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この記事を書いた人

ゲーム好きが高じて、ゲーミング向けを中心に50台以上のモニターを買い漁ったガジェットオタクの20代です。好きなジャンルはFPSやTPSで、月のゲームプレイ時間は200時間ほど。
数多くのゲーミング機器を触ってきた経験を活かし、ブログとYouTubeでガジェットレビューを中心に活動しています。

お仕事についての問い合わせはメールでお待ちしております(個別の質問等には対応していません)↓
moniken.review☆gmail.com
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